「これ、自転車が終わってから、フルマラソン走るの?」
「いえ、これは 10km ですね」
「じゃあ本物じゃないんだ」
「本物っていうか...」
と、いうような会話をすることになった。
リオ・オリンピックでは、日本時間夜11時にトライアスロン競技がスタートする。他の競技の待ち時間に、ライブを見る人もいるだろう。
終電で帰りたいので、私はビアバーで解説できない。そんなわけで、飲みながら適当に解説するような内容を書いておく。
我慢大会ではない
トライアスロンは、決して、断じて、我慢大会ではない。マラソンが、柔道が、サッカーがそうであるように、競技中に身体的な負荷はかかるけれど、苦痛は競技の本質ではない。
まして観戦するときは、別に他人が我慢している様子を見るわけではない。暑さ我慢競争よりは、モータースポーツを見る方に近い。
オリンピック・ディスタンス
オリンピックでは水泳 1.5km、自転車 40km、ラン 10km を連続して行う「オリンピック・ディスタンス」で競技をする。スタートからフィニッシュまで2時間ほどなので、およそフルマラソンと同程度の観戦時間である。
鉄人レースなどと呼ばれるのは、水泳 3.8km、自転車 180.2km、ラン 42.195km のレースだ。他にも、長短さまざまなフォーマットがある。
どれが本物とかいう話ではない。各人思い入れや、参加/観戦するなかで受け取るものは違うかもしれないけれど。
この文章では、オリンピック・ディスタンスのエリート部門のについて書く。途中に挿入している動画は、文章に関連する部分から再生開始するようにしてある。
スイム
海、湖、河川などのオープンウォーター環境で、1.5km を泳ぐ。
コースレイアウトはレースによって異なる。ロンドン・オリンピックでは湖で1周回、ワールドトライアスロンシリーズ(以下WTS)のアブダビでは海を750mを2周、WTS ゴールドコーストでは海で1000mを1周+500mを1周である。
多くのレースにおいてポンツーン(浮橋)に一列に並び、号砲で一斉に飛び込む。砂浜に一列に並んで、一斉に走りだす形態もある。
複数周回するレースでは、周回ごとに、ポンツーンや砂浜に上がり、再び海に飛び込むレイアウトが多い。ここで各選手は、自分の正確な位置を確認できる。
男子の場合、トップ集団は 1.5km を16〜18分程度で泳ぎ切る。参考までに、プールでの1500mの世界記録は14分半である。
オリンピック・ディスタンスでは、着替えずに全種目を通すので、トライスーツという専用ウェアを着用することが多い。泳ぎを妨げない程度にフィットしてるが、走るのに差し支えない程度に通気する。
水温が20度未満のときにはウェットスーツを着用してよい。18度以下では着用が義務。トライアスロン用のウェットスーツは肩周りが柔らかい。水の抵抗が少ない素材でできており、かつ浮力も得られる。そのため、一般にウェットスーツを着用したほうが速く泳げる。
T1
種目と種目の間のことをトランジット/トランジッションという。スイムからバイクの間のトランジットのことを T1 という。トランジットの間も計時は続くため、できるだけ速くT1を終わらせることも、重要な要素である。T1 で選手はまず、ウェットスーツ、スイムキャップ、ゴーグルを脱ぐ。このとき、すべての荷物を、用意された箱に入れなければならない。
つづいて、ヘルメットを被ってから、バイクをラックから外す。
ほとんどの選手は、裸足のままでバイクを押していく。バイクシューズは、ビンディングであらかじめペダルに固定しておく。この状態で、乗車ラインまでバイクを押して走っていく。
乗車ラインを超えてから、バイクに飛び乗り、走りながらシューズに足を入れる。
バイク
バイクは40km。たいてい周回コースで、会場にいる観客は、一箇所に留まって何度も選手を見ることができる。周回ということは、コース内の人口密度が上がる。そのため、選手同士の距離が近くなりなりやすい。
伝統的に、トライアスロンは単独競技であり、他人の力を借りてはならぬという考え方があった。そのため、自転車で他の競技者のすぐ後ろを走行する「ドラフティング」は禁止されてきた。他人を風除けとして使うことは、援助を得ていることになるからだ。
現在でも、一般選手のレースや、長距離のエリートレースでは、ドラフティングは禁止されている。
一方、オリンピックなど、エリートの短い距離のレースでは、ドラフティングは許可される。国内でも、日本選手権や学生選手権はドラフティングが許される。そのため集団内で先頭交代して、負荷を分担しながら、協力することになる。
コースレイアウトによるが、フラットなコースなら1時間未満で走る。およそ時速40km程度。
細かい順位よりも、どの集団にいるのか、他の集団と何秒開いているのか、そして、ライバルがどの集団に属しているのか(すわなちライバルと何秒差なのか)が重要である。
大雑把にいうと、先頭集団は交代しながら効率よくスピードを上げ、後続集団を引き離すことで、ランを早めにスタートできる。一方、追走集団は「ランの開始時までに」先頭集団に追いつけば、一緒にスタートできる。
ランが得意な選手は少しくらい先頭から遅れても巻き返せるかも知れない。ランが苦手な選手は、できるだけバイクで稼いでおきたい。問題は、優勝争いをする選手は、スイム・バイク・ランすべてが速いということだ。
集団が大きいと、後ろのほうにいれば楽に走れそうだが、そう単純ではない。前のほうで起きた変化に対応しにくい。まず、誰かが飛び出したときに、集団がすぐに吸収しなければ、逃げられてしまう。また、落車が発生すると巻き込まれやすいし、回避もしにくく道が詰まるので、置いていかれやすい。
T2
バイクからランへのトランジットを、T2という。
降車ラインが近づくと、選手はバイクに乗ったままシューズを脱ぐ。シューズはペダルに固定したままで、シューズを上から踏んでこぐ。
降車ラインの手前でバイクから降り、自分のラックまで走って押していく。ラックに自転車を置いてから、ヘルメットを脱ぎ、ランニングシューズを履く。ヘルメットは箱に入れなければならない。そして、ランを開始する。
バイクと違って、ランではドラフティングの効果が小さいが、エリート選手のレベルではランのタイムを数秒早くするのさえ難しいので、トランジットの時間を短縮しようとする。
ラン
ランは 10km を走る。多くの場合、トランジットエリアを通過する周回コースをとる。参考までに、10000メートル世界記録が26分17秒、10kmロードレース世界記録が26分44秒である。トライアスロンのエリート選手は、スイム、バイクの後で、10km を30分程度で走る。
ランが苦手な選手の場合、バイクで先頭集団に入れていないと、この時点で優勝ができない。
ランコース上にはペナルティボックスがある。競技中に反則をした場合、既定された時間(15秒とか)をペナルティボックスに入って待たなければならない。
反則で多いのは、トランジットで使用済の用具を箱に入れなかった場合、ヘルメットをきちんと着用せずにバイクを動かした場合、乗降ラインを守らずにバイクに乗った場合など。
ランの何周目でペナルティボックスに入るかは、選手が決めて良い。1周目で入ってから追いかけてもいいし、最終周までにちぎっておいてから入ってもよい。
まとめ
オリンピック・ディスタンスのトライアスロンが、どのようなものか、観るときによく聞かれることを、ざっと書いておいた。
来月には WTS 横浜大会、夏にはオリンピックがあるので、そのときには、コースや選手についてまとめようと思う。
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